誠涼会通信|武蔵野市・三鷹の予防中心の歯医者 誠涼会

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院長よりお伝えしたいこと

口腔内からの健康維持に必要な、歯科のかかり方とは?

●ポイント1
他の病気と違って、歯は治療によって元の状態に戻ることはありません。特に歯を削ったり、抜いてしまったりした場合は再生することはありませんから、本来の歯の変わりに人工の材料を利用して補います。


●ポイント2
虫歯や歯周病は言わば文明病とも言えます。野生の動物や現代的な文明を持たずに生活している人々には、虫歯や歯周病は全くないか非常に少ないのです。野生の動物は歯を失ったときがその一生を終えるときです。本来はその命がある限り、歯も使い続けられるように出来ています。

●ポイント3
歯と口の働きは、健康的に生きる上でかけがえの無い大事なものです。生まれてからその命を終えるまで、これほど身近でありながら、その重要性を認識されていない器官も珍しく、特に日本は他の先進国の中でもひときわその認識が無いと言われています。それでは、以上のことを踏まえながら、もう少し具体的に話を進めていきましょう。

 

「皆さんが歯医者さんに受診される動機は何ですか?」

日本では、歯が痛くなったから、噛めなくなったから、という理由が圧倒的に多いはずです。しかもかなり我慢を重ねて、いよいよこれはまずいという状況になってから駆け込む方がいらっしゃいます。そしていきなり治療です。すでに痛むところを処置するのですから麻酔も効きにくく、しかも目に入るのは怖そうな光り物ばかり、十分な説明も無いうちに(もしくは十分に理解できないうちに)キーンという嫌な音とともに歯を削られていく、さらに進行した状態では残念ながら抜歯、という悲劇に遭遇するわけです。

 こんなことは誰でも嫌ですよね。血圧は上がり緊張の連続。優しい歯医者さんばかりではありませんし、治療が上手なのか下手なのかわからない。頑張って治療を受けたのに、しばらくするとまた痛くなってきた。などなどを繰り返しながら歳と共に歯が無くなっていく。ふと気づいたときには自分の歯でしっかり食事をすることが出来なくなってしまい、歯茎からの出血、笑うと銀色の金属が目立つようになっています。何かおかしいと思いませんか?

日本ほど人口に対する歯科医師の数が多い国はなかなかありません。

本来、ある病気の専門の医者が増えればその病気も減らなければおかしいのですが、首都圏においてはコンビニの倍はあると言われるほどに歯科医院があるにもかかわらず、なぜいまだに皆さんの歯が削られ、もしくは抜かれていくことになるのでしょうか?実はその答えは諸外国ではずいぶん前に明白になっており、その結果、虫歯や歯周病で歯を失うということは激減しているのです。

ではその答えをお知らせいたします。

歯は治療しても元には戻りませんとお話しました。一般的に体の組織は再生する力を持っています。例えば骨折をして、外科のお医者さんにかかって治ったとします。骨折した部分はどうなりましたか?骨が再生されて元に戻ったのですね。また風邪を引いてしまったとしても、通常は安静にしていれば治ります。体のほうで元の状態にしていくわけです。

つまりお医者さんにかかる前の状態に戻るということが、本来の治ったということなのです。

対して虫歯で治療をするということは、歯を削り、また抜いてしまい、その代わりに人工物で補うということがほとんどです。不幸にして足を失った方に義足を使用していただく、目を失った方に義眼をしていただくのと同じように、人工の歯を使っていただくので、義歯という言い方をします。この《義》という状態のもので保険適用を受けられる治療は、一般的に歯科だけです。それはなぜでしょうか?

答えは、個人個人にあったものを作り、合わせるという技術や完成度が必要なため(オーダーメイド)、時間と手間がかかり、一般的な保険診療の枠にそぐわないためです。

 

院長よりお伝えしたいこと

 

日本の医療保険の基本的な概念と仕組みは昭和36年ごろに作られました。国民全員が最低限の医療を平等に受けられるように、相互補助の精神で保険料を集め、疾病保険という概念に基づいて施行されています。

(疾病保険=病気になってしまったら、その治療に保険が適用されるというもの。病気と認められない状態の治療や処置には適用されない。例えば美容整形や人間ドック、虫歯や歯周病の予防的処置)

ですが、医科の医療保険の実態と歯科の医療保険の実態は、かなり違います。しかし医療保険として論ぜられるときは、まとめて対処されますのでかなり無理があります。医療技術は年々進歩し、新しい考え方や治療法が確立されていきます。基本的に医科ではそれらの新しい治療法なども保険導入されていきますが、前述しましたように、もともと歯科診療は再生しない組織を個々に人工物に置き換えるという《義》の部分が多いため、平等にということが成り立ちにくいのです。簡単に治療が済んでしまうこともあれば、とても難しいという場合もあります。医科ではそれらの部分は保険外診療という形で実費を負担しないとできないことを、歯科医療保険では無理に保険の仕組みに導入したために、頭が混乱するほど厄介な状況を招いています。

 

日本の歯科医療保険における費用は、同じような経済レベルの諸外国の医療費に比べ、おおむね5分の1から20分の1(!)となっており、そのため諸外国と同様の内容の治療をするには無理があります。材料費、人件費、その他の経費は諸外国より高い日本において、治療費がそれだけ安いということは、どういうことでしょうか?

 日本の歯科医院では一日に沢山の患者さんの治療をしないと経営的に成り立ちません。世間一般では歯科医院は儲かっているという認識があるかもしれませんがそれは一昔前の話です。現在では卒業しても無給で研修をする場合もあり、一般の大学卒業者よりも給与は低いのが現実です。たまたまマスコミなどでもてはやされる、一部の歯科医師の収入が多いという表現のために誤解を招いていますが、同年代の他業種と比べても、決して収入が多いわけではなく、むしろ低いといっても過言ではないでしょう。最近では歯科医師が親戚にいるという方も多いので、確認していただけばすぐにわかることです。ボーナスもなければ退職金もなく、まさに体が資本で働くというのが現実です。他の医師に比べて平均寿命が短いというのもその表れでしょう。

薄利多売という言葉が使われますが、こと医療においてはいかがなものでしょう。同品質のものを大量生産して売ることは出来ますが、個々の患者さんの様々な症状に対して、きめの細やかな医療を提供するということと、決められた時間に沢山の患者さんの治療に対応するということは相反する事で、どうしても無理があるのです。私もかつては一日に沢山の患者さんの治療をしていました。毎日がんばって、がんばってヘトヘトになるまで治療をし、挙句の果てに体を壊して診療が出来なくなり、当時通院していただいていた患者さんに逆にご迷惑をかけてしまいました。

 

院長よりお伝えしたいこと

 

では、そのがんばって治療していた内容はどうだったでしょうか? 保険のルールに従って虫歯を見つけては削って詰める、それでも無理ならば抜歯して義歯を入れるという繰り返しです。患者さんもがんばって通院していただいている、医院のスタッフもがんばって診療している。でも守るべき患者さんの歯と口腔内の環境は、治療をすればするほど本来の健康な天然の歯ではなくなり、銀色の金属が主体の人工物に変わっていったのです。次から次へとお待ちいただいている患者さんの治療をしていきますので、カルテもまともに書き続けられません。昼休みもそこそこに、夜の8時をすぎてカルテの整備や技工物の製作、確認をし、終電で帰宅するという日々が続きました。安い費用で沢山の治療をすることが良い歯科医師だと思っていた自分の考えに、そのとき初めて、【何かがおかしい?】と気づいたのです。

答えはもうお分かりですね。治療をしても歯は元に戻らない、しかも最善を尽くした治療でなければ、見せかけの処置に他ならず、天然の歯やバランスのとれた健康的な口腔内の環境を整えることはできないのです。

なぜ患者さんの歯やお口の環境が悪くなってしまったのか? その原因を知らずして闇雲に安い費用で適当(その場しのぎ)な治療をすることは、歯を治療するということではなく、もしかしたら壊しているのではないか? 自分は歯医者ではなく破壊者だったのではないか、とさえ思いました。一生懸命に誰にも負けないくらいがんばって治療していたというのに。その後も数々の悩ましい現実と戦いながら、今現在では確信を持って皆様にお伝えできる事があります。
できるだけ歯の治療を受けないようにしていただきたい、ということです。

 

我々歯科医師にとって、歯を削ることや抜いてしまうことは難しいことではありません。しかしほんの少しでも元に戻すことは出来ないのです。これは金額の問題ではなく不可能なことなのです。ですからなるべくご自身の天然の歯と、バランスのとれたお口の環境を維持することを最優先にしてください。

現在では虫歯と歯周病についてはその原因がはっきりしています。ありがたいことにその予防法も確立していますので、解っていながらそれをしないということは、結果が悪くても完全な自己責任ということになります。

正直に申し上げまして、現在の保険診療では本当に歯のために、また健全な口腔内の環境に近づけるという治療はできません。安い費用設定のなかでそれなりの処置、というのが本当のところです。それで十分だ、という方はそれでも良いのかもしれませんが、私は自分が治療を受けるときに安い費用で適当にしてほしいとは思いませんし、自分の家族に治療が必要だとしたら、最善を尽くしたいと思います。

最善の処置をしても天然の歯には適わないという現実を知っていれば、ましてや体に有害とされる金属(アマルガム合金、ニッケルクロム合金、パラジウム合金など)の材料でその場しのぎの治療を受けるということになれば、出来る限りそのような事態にならないように、病気(虫歯や歯周病など)を予防することが皆様にとって最も有益だということをご理解いただけると思います。

 

院長よりお伝えしたいこと

 

保険診療とは最低限の診療を国民全員に提供できるように、というのが前提です。したがって歯科医師という資格さえあれば、日本中のどこで治療しても、経験や技術のあるなしに関わらず、一律の料金設定になっています。

具体的に言えば、一本の歯の虫歯を治療するとします。

A先生は卒業仕立ての若くて素敵な先生で体力もあります、夜遅くまで沢山の患者さんを見ることが出来ます。卒業してすぐにその様な診療をしてきましたので、一日に40人くらいの診療をします。8時間働いたとして1時間ごとに5人、一人の患者さんに12分でその日の処置を終えて行きます。

一方、卒業して10年のB先生はコツコツと勉強を続け、患者さんとの信頼関係を重視し、出来るだけ歯を削らずに痛みの無い処置を、と気を配り、治療方法の説明のみならず予防の大切さを理解していただこうとし、ついついお話が長くなり1人の患者さんにどうしても30分から1時間はかかってしまいます。一日に7人から15人ぐらいの処置が限界です。

さてこのお二人の先生のどちらにあなたは治療していただきたいですか? お二人が治療した項目が全く同じ場所の虫歯の詰め物だとして、A先生の治療は確かに治療はしていますが、経験も浅く短時間での処置なのでどうしても上手とは言えません。(患者さんには解らないかもしれません。)B先生の治療はさすがに経験もあり勉強も重ねていて、時間もしっかりとりますので、丁寧で注意深く上手な処置です。単純にお二人とも保険診療で行ったとして、収益はA先生がB先生の3倍~5倍になります。もっとも他の経費(人件費、家賃など)が同じだとしての話ですが、保険診療では経費の差は考慮されませんので、結果として東京で処置をしても地方で処置をしても、卒業間もない先生が5分で処置をしてもベテランの先生が1時間で処置をしても、治療費は同じということです。もともと日本の歯科保険診療費は欧米の5分の1から20分の1ですからその内容は押して知るべきです。正直で真面目な歯科医師ほどこの現実に頭を悩ませることになるのです。

 

院長よりお伝えしたいこと

 

日本において、患者さんの歯からはじまる口腔内の健康を維持するには、
皆様が正しい知識を得て、その価値観を早く認知していただくことだと思います。

そのためにもその診療の内容を十分に理解し、治療法を選択していただきたいのです。

単に保険料を払っていて安く治療を受けられるからではなく、ご自身が納得した上での選択をしなければいけない時代になっている、ということです。

時代の流れとともに個人情報の守秘義務とともに、ご自身の診療録(カルテ)などは見て確認できるようになってきています。2006年4月の保険改正では、さらに診療明細の発行と各種の指導情報提供文書を交付することになりました。ひとつの文書を発行するのに最低5分はかかりますので、その間診療はストップせざるを得ません。にもかかわらず、それらの経費(紙、インク、必要な機器など)に対する給付は行われず逆に診療報酬は10%~30%の減額になると言われています。

当院ではなるべく保険の仕組みの中で出来ることを、工夫して治療に当たってきましたが、そのようなことがかえって混乱を招き、皆様との信頼関係を壊すことになりかねないと判断いたしました。なるべく皆様の負担を抑えてその中で融通を利かせて診療をしていくことへの限界、ということになります。

そのため、皆様に保険診療で出来ることと、出来ないこと、あえて保険診療ではしないほうが良いと思われることなどをお知らせしていきたいと思います。

虫歯を削り・詰める・被せる・抜いてしまうという治療を早く沢山すればするほど病院の保険診療での収入は増えますが、逆に虫歯でも極力削る量を減らす、なるべく抜かない方法を選択するといった診療では時間は何倍もかかりますが保険収入はないに等しいということになりますし、ましては虫歯、歯周病にならないような予防診療となれば保険での病院経営にとっては、潰れるためにするようなこととなります。

 

院長よりお伝えしたいこと

 

保険のための診療をするのではなく、皆様のお口からはじまる健康維持にとって本当に必要な治療と予防、管理を提供するために行動を開始いたします。保険医療機関でありながら体制に反発せざるを得ない部分もありますので数々の問題を抱えることになると思われますが、ご理解をいただきたいと思います。

当院にも歯科用金属によるアレルギーのために皮膚科からの依頼により、すべての保険適用金属を除去し、アレルギーを起こさない材質に置き換えなければならないという状況で、来院される患者さんがいらっしゃいます。皆さん例外なく「知っていればアレルギーを起こす金属での治療はしなかったのに」とおっしゃいます。

また歯を失ってインプラントという治療の選択肢があるときにその費用が30~50万円(1本の治療費)かかるということを伝えられ驚く方も多いのです。それでも天然の歯にはかなわないのですから。 皆さんの天然の歯はあえて金額にするとしたらいくらでしょうか?私は1本100万円は下らないと考えます。対して保険診療で歯を抜歯するときは1400円から4600円です。ご自身で支払う窓口の3割負担金は500円から1500円くらいなので、その差は歴然です。

こうして日本では、最高の素材である、いくらお金を出しても変えられない天然歯を、保険診療というルールによって質の低い材料で置き換えるということが当たり前のように行われているのです。

もちろん日本では保険診療が全体の7割以上を占めていますので中には上記のように苦悩し悩みながらも、赤ひげのごとく良質の治療を心がけている先生もいらっしゃいます。しかしかなりのストレスを抱えていますので、まず間違いなくどこかに無理を生じています。

毎日安い材料で短時間にお料理を作ったことしかない人が、最高の材料で丁寧に最高のお料理を作ることが出来るでしょうか?毎日最善を尽くす努力を重ねていかないと、診療技術も、本当に大事な診療方法も、患者さんにご提供できないのです。

院長 高橋 周一

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